筑波大学現代視覚文化研究会レビュー班 公式ブログ

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絶対に読むべきオタク評論 3冊目(『動物化するポストモダン』)

 私、御星美香はオタクについて研究するのが趣味な変人である。

 他のレ班員の多くの人がいろいろな作品の評価を書いてくれると思うので、今回は少し趣向を変えて、オタクそのものについて書かれた本の中で、読みやすくかつ興味深い本を3冊ピックアップして皆さんに紹介したいと思う。今回は3冊目。

 

③ 東浩紀動物化するポストモダン

 オタク研究を行う学者がほぼ必ずと言って良いほど引用する、その道では非常に有名な本。著者のこの本での主張をまとめると、日本や世界が“ポストモダン化”するに際して起こった価値観への変化は、全てオタク文化に集約されている、という衝撃的なものである。第一章の最初の見出しタイトルである『「オタク系文化」の構造に現れているポストモダンの姿』という1文がそれを物語っている。また、本書が出るまで圧倒的に支持されていた『オタク学入門』(1冊目として紹介したので、是非その記事も読んでいただけると幸いである)の主張を完全に否定している点も本書の特徴の1つ。この本のすごいところは、2001年発売の本書での主張が、17年後の現代を的確に見抜いている点である。当時から賛否両論ある本ではあるが、少なくとも私は現代を見事に予知していると思う。

 本書の著者の専門は哲学であるため、哲学的な文章に慣れていないとなかなか読みにくい。本論での「データベース的動物」という考え方も、よく読めば分からなくは無いが、少し理解しにくい所がある。そのため、オタク評論を初めて読む際に読む本としてはあまりオススメできない。しかし、良く読めば哲学を専門としない人でも理解出来るようにはなっており、その理論が他の著作に与えた影響は多大なので、もしオタクそのものについて興味を持っている人なら、是非一読するべきである。(御星美香)

考察が捗る!オバレの公式コミカライズ(『KING OF PRISM byPretty Rhythm ~Over The Rainbow~』)

 『KING OF PRISM byPretty Rhythm ~Over The Rainbow~』(綾月もか/協力・キングオブプリズム製作委員会)では、先輩ユニット・オバレを主役として、映画で描き切れなかった彼らの日常を描いている。絶対アイドル・速水ヒロがスーパーに初めて行く回でヒロ様は「いつもすぐコンビニ行っちゃうからなぁ…」と言っている。幼少期にはパンの耳を食べるような生活を送り、育児放棄寸前とも思われる状態にあったヒロ様はアイドルとしてブレイクし、金銭面に大きな変化が起きた。そのような背景によって、高校生になるまでスーパーに行ったことがないという金銭感覚の破綻がもたらされていると考えると、「ヒロ様……、コウジのあったかいご飯をいっぱい食べて幸せになって……」という思いに駆られる。また、映画『KING OF PRISM byPretty Rhythm』以上に甲斐甲斐しく他のオバレメンバーの世話を焼いているコウジの姿を見ると、家庭的な父親を亡くし、仕事がちな母を支えてきた彼に「尽くさなければ愛されない」という一種の脅迫観念でも芽生えているのでは、と考察してしまう。完全なギャグも多く(むしろスーパー回もコウジ回も普通はギャグだろう)、キンプリの魅力が存分に詰まった一冊である。(はんねる)

絶対に読むべきオタク評論本 2冊目(『新・オタク経済』)

 私、御星美香はオタクについて研究するのが趣味な変人である。

 他のレ班員の多くの人がいろいろな作品の評価を書いてくれると思うので、今回は少し趣向を変えて、オタクそのものについて書かれた本の中で、読みやすくかつ興味深い本を3冊ピックアップして皆さんに紹介したいと思う。今回は2冊目。

 

② 原田曜平『新・オタク経済』

 現代において自分をオタクであると名乗る人々が増えたが、彼らは昔からマスメディアが報道してきたような「根暗で太っていてファッションに興味が無い」人達では無い。むしろそのような人こそ絶滅しており、おしゃれな男女がオタクを名乗るのが現代であると言うことを前提として、では彼らはどのような特徴を持つのか、どのように系統分類出来るのかについて書かれているのが本書である。また、多くのオタク評論でオタクは“第3世代”まで存在するとされてきたが、時代の変化によって生まれた“第4世代”を最新のオタクとしているのも本書の特徴である。オタク世代間論争を先に進めた意味でも価値がある。

 現代のオタク4分類のわかりやすさが何より良い。“リア充オタク(ガチ)”や“イタオタ”など系統の種類の名前も分かりやすいのも魅力の1つ。また、様々なオタク評論で語られてきたような基礎的な知識を大体復習できるので、普段オタク評論を読まない人が最初に読む本としてもとっても優秀な本である。

 著者はオタクではなくあくまでマーケティングの対象としてオタクを研究したにすぎないため、現代のオタクを否定することも無ければ肯定することもない。ただただ分類を行うだけの本であるため、一部のオタク評論にあるように読者をイライラさせるような事が絶対無いのも良い点であろう。(御星美香)

「タミヤMM ドイツ突撃工兵チーム ゴリアテセット」 レビュー&製作記

 せっかくのネット記事。いつものKIMOOTA誌上とは違う事がしたい……。という訳で、白黒印刷のKIMOOTAではなかなか難しいプラモデルのレビューをしていきます。

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 今回紹介するキットはタミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズの「ドイツ突撃工兵チーム ゴリアテセット」。原稿締め切り4日前にプラモのレビューを思いついたのであまり時間がかからず簡単に組めそうなこのキットを選びました。もともと興味のあったキットでもあるのでいい機会になりました。

 さて、まずはこのゴリアテという兵器がいったい何なのかを説明しましょう。ゴリアテは第二次大戦中にドイツ軍が開発した小型爆弾運搬車です。全長約1.6mのコンパクトな車体に電動モーターと最大60kgの爆薬を搭載していました。有線で遠隔操作ができ、目標に接近、爆弾を炸裂することができました。主に突撃工兵が運用し、固定陣地や車両への攻撃ができました。(参考:キット外箱の解説)

 1.6mの小型兵器はゴリアテ、超重戦車はマウス……。なんだかおもしろいですね。 

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 では、中身を見ていきましょう。ランナーは3枚。ゴリアテのパーツであるAランナーは2枚入っており、ゴリアテを2つ作れます。Bランナーは突撃工兵のフィギアです。また、ゴリアテからのびる有線ケーブルを再現するため、銅線が付属しています。説明書は紙が1枚。デカールは付属していません。 

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 Aランナーです。かなり少ないパーツ数ですね。履帯はドライブスプロケット・アイドラーホイールとの一体成型だと思っていたのですが、連結組み立て式でした。連結組み立て式とはいえ、タミヤ1/48MMシリーズとおなじように直線部分はつながっています。ディティールは良くなるのでいいですが、この手の連結組み立て式履帯がかなり苦手なので、ちょっとイヤですね。(あくまで個人の感想)

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 Bランナーです。人形は箱絵の姿勢のものが3体ついています。躍動感あるシワが素晴らしいです。 

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 組み立てが終わった所です。キットの出来が素晴らしいので、何も考えず説明書に従っていればいつの間にかできています。合いも完璧。さすがタミヤ。 

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 履帯をランナーから外す前に先に塗装しちゃいます。ここの順番は人によって違うと思います。ランナーから外さずに塗装する人と車体に取り付けてから塗装する人、どちらが多いのでしょうか?

 塗料はタミヤカラーを使用しました。フラットブラックとジャーマングレイを混ぜ、レッドブラウンを少量入れた色です。

 また、時間が限られているのでサフレス塗装です。 

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 次は車体の塗装です。時間節約のため、先ほど履帯を塗装するのに使った色をそのまま影色として塗装し、その上からダークイエローを吹き付けました。ちょうどタミヤカラーのダークイエローが切れていたので、ミスターカラーのダークイエローを使いました。水性アクリルの上からラッカー系塗料を塗ったわけで、ちょっと不安はありましたが特に問題なく塗装できました。履帯と同様、時間節約のためサフレス塗装です。 

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 ケーブルを収納するハッチをマスキングし、白色を塗り分けます。本当は明るい白色をダークイエローの前に塗るのが正解なんでしょうけれど、白を後に塗るほうがマスキングしやすい気がしたので、この順番にしました。

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 瞬間接着剤などを使って履帯を車体に取り付けました。重力による垂れがきれいに再現されていて素晴らしいです。

 ただ、この作業が結構難しかった……。塗装する前に車体に取り付けたほうが良かったかもしれない。よく見なくてもグチャグチャなんで、上の写真は拡大して見ないでね。あ、僕が下手なだけでキットが悪いわけではありません。 

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 銅線を取り付けました。メタルプライマーを塗ってからフラットブラックを塗りました。 

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 箱絵のゴリアテはめちゃくちゃ汚れていますが、自爆用の使い捨て兵器がそこまで汚れることがあるのかは疑問です。しかし、全体的にトーンを落としたい感じがあるので、あまり汚しすぎないように気を付けながらウォッシングはしました。

 使った色はタミヤエナメルのブラックとブラウンを混ぜた「万能汚い色」。

 このあと、履帯の塗装も軽くしました。埃がかぶった感じを出すのに、タミヤエナメルのバフで軽くドライブラシした後、常に接地する突起部分にメタリックグレイを入れていきました。 

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 最後につや消しクリア―を吹いて完成です。 

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 フィギアと一緒に撮るとこんな感じ。

 フィギア塗装している時間はありませんでした。

 

<総評>

 値段が安めでとても簡単に作れそこそこ満足感がある良いキットです。フィギアの造形も良いので、ジオラマなどにすると映えると思います。

(しゃぶりん)

うーさーのその日暮らし(シリーズ全3作品)

 ギャルと金と肉が好きな謎の生物・うーさーの日常(?)を描くコメディ作品。第1期と第2期は5分、第3期は8分の短編アニメであり、基本的に1話完結だ。私の周りでは『わかばガール』のついでに第3期・夢幻編を見たという声もちらほら聞いた。うーさーの見た目にそぐわない性格とカッコいい声(CV.宮野真守)で既に面白いが、そこから繰り出される予測不能の展開で楽しませてくれた。ただ単に混沌としているだけではなく、毎回毛色が違う混沌なので飽きないのも良い。時々哲学的ですらある。そしてedが全シリーズ高品質である。特に第3期の紙を使ったedアニメーションがオシャレで素敵。また、やたらとゲストが出演するので、そういった面でも楽しメル。私としてはおすすめの作品であり、未視聴の方には是非一度見てみてほしい。ニコニコ動画等でいくつかの話が無料で見られるはずだ。前述した通り短編なので、そう時間はかからないだろう。よくコラボしていた「ミス・モノクローム-The Animation-」も面白い短編コメディシリーズなので、そちらもおすすめ。(VitaminC)

【ネタバレあり】「魔法が存在する世界には、色々なリア充がいる」(『まぢちる』)

 『まぢちる』は、異能力を持つ魔法少年・少女たちが謎の連続殺人に巻き込まれていく本格ミステリアドベンチャーゲームで、第4話で完結する。ほのぼのとしたBGMにゆるい絵柄であるが、まあグロい。魔法少女系ではありがちと言ってはいけない。アクション要素は難しくないので初心者でも問題なくプレイできる。個人的に、このゲームに登場するリア充(と秒読み寸前のリア充予備軍)の末路が報われなくてとても悲しい、悲しすぎる。いつもはリア充を敵視している筆者であるが、このリア充達に関しては、平和な世界線で幸せに結ばれて欲しいと涙してしまった。ゲームの難易度も高くないので、ぜひ1度はプレイしてほしい。(こんそめ)

『はなまる魔法教室』第1巻レビュー

 漫画において、絵柄が最も重要な要素の1つであるということは間違いないだろう。その点、本作は素晴らしい。まるで版画の様な柔らかい絵柄は、ただ単純に可愛らしいだけではなく、本作の雰囲気にとても良くマッチしている。そして、初めの内は自らを魔法使いと称する担任の先生を訝しんでいた生徒たちが、生徒1人ひとりの個性を褒めようとする彼女の姿勢に触れて段々と心を開いていくというストーリーも心温まる。誰に向けても文句無しにオススメできる一冊。(アマミ)