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絶対に読むべきオタク評論本 1冊目(『オタク学入門』)

 私、御星美香はオタクについて研究するのが趣味な変人である。

 他のレ班員の多くの人がいろいろな作品の評価を書いてくれると思うので、今回は少し趣向を変えて、オタクそのものについて書かれた本の中で、読みやすくかつ興味深い本を3冊ピックアップして皆さんに紹介したいと思う。今回は1冊目。

 

① 岡田斗司夫オタク学入門

 90年代に東大で「オタク学」と銘打って、ゼミや講義を開いた岡田斗司夫氏が、オタクがどのようにアニメや映画を観ているかを一般に向けて解説した本。

 この本によると、オタクは3つの視点で作品を観る人々の事だという。

 1つ目が「粋の眼」。「自分独自の視点で作品中に美を発見し、作者の成長を見守り、楽しむ視点」とのこと。本来物語を楽しむという意味では、別にどうでも良いはずの“声優”に基準をおいてアニメを観たり、監督や作画監督など“スタッフ”に基準をおいてアニメを観たりする眼である。

 2つ目が「匠の眼」。「作品を論理的に分析し、構造を見抜く科学者の視点」とのこと。例えば、何話でお話が盛り上がるようにアニメが作られているかを分析したり、作画技術を意識したりする眼である。

 3つ目が「通の眼」。「作品の中にかいま見える、作者の事情や作品のディテールを見抜く目」とのこと。作品が発表された当時の時代背景や作者の発言を作品の内容と照らし合わせて比較し、そこに共通点を見出すことを楽しむ眼である。

 普段は意識していないが、実際我々にはそういう側面があり、とてもよく分かると思う。それを未だオタクに対する差別がひどかった1996年にまとめ、一般に向けて出版したことが本書の評価される最大の点である。

 ただ、作中で紹介される具体例や作品のタイトルが少し古くさく、ちょっと分かりにくいかも知れないのが難点。逆にそこで昔の名作と出会うというのも本書の1つの楽しみ方かも知れない。(御星美香)